東京地方裁判所 昭和44年(借チ)9号 決定
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〔主文〕1、申立人が、相手方らに対し、本裁判確定の日から三月以内に金二七四万円を支払うことを条件に、別紙目録記載の土地賃貸借契約の目的を堅固建物所有に変更する。
2、前項により土地賃貸借契約の目的が変更された場合、(一)借地期間を前項の金員の支払がなされた日から三〇年延長し、
(二)賃料を右金員の支払がなされた月の翌月から3.3平方米当り一ケ月一五〇円に改める。
〔決定理由〕(申立の要旨)
1、申立人は、菊野三郎から、昭和四二年一〇月一日別紙目録記載の土地297.52平方米(以下本件土地という。)を非堅固建物所有の目的、期間二〇年、賃料一ケ月八六〇〇円の約で賃借し、右賃貸人菊野三郎は昭和四三年三月二七日死亡し、相手方両名において共相同続して賃貸人の地位を承継した。
2、本件土地は、昭和三八年一月二八日準防火地域の指定を受け、附近は、すべて堅固建物が建築されているので、申立人は、本件土地に堅固建物を建築する計画を有しているが、契約目的の変更につき相手方らと協議が調わないので、契約の目的を堅固建物所有に変更する裁判を求める。
(決定理由)
1、本件の資料によれば、申立の要旨として掲げた1の事実のほか、本件土地は、申立人が菊野三郎から賃借した以前すでに築山正夫が菊野三郎から賃借し、同地上に家屋番号八番三五木造瓦葺二階建居宅一棟床面積一七坪八合七勺二階六坪外一棟を所有し、申立人の夫吉井誠吉が経営する昭和機械製造株式会社において昭和三六年九月築山正夫から右二棟の建物と敷地賃借権を買い受け、右敷地賃借権譲受につき賃貸人菊野三郎の承諾を受け、その後昭和四二年一〇月一日にいたり、菊野三郎、昭和機械製造株式会社、吉井誠吉三者合意の上借地人を吉井誠吉に変更した上即日右土地賃貸借契約を合意解除し、同日改めて申立人と菊野三郎との間において本件土地賃貸借契約を締結したこと、なお、昭和機械製造株式会社が築山正夫から買い受けた前記二棟の建物は、その後同会社から吉井誠吉に所有権が移転され、後日取り毀され、現在、申立人が本件土地上に家屋番号八番一の一木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建居宅一棟床面積19.44平方米を建築所有していること及び右建築につき相手方らの異議があつたことが認められる。
従つて、申立人と相手方らとの間の本件土地賃貸借契約は昭和四二年一〇月一日締結されたものではあるが、その実質は、築山正夫・菊野三郎問の前記賃貸借契約を承諾したものであるので、本件申立の採否につき考慮すべき附近の土地の利用状況の変化その他の事情の変更等は、築山正夫が本件土地に借地権を有していた当時を基準として考えるべきである。
本件土地は、築山正夫が借地した後である昭和三八年一月二八日準防火地域の指定を受けたほか、第四種容積地区の指定を受けており、実況見分の結果によれば、本件土地附近は高層建物が林立し、本件土地は、いわばビルの谷間という実情にあることが認められるので、準防火地域、第四種容積地区の指定と相まち、土地の客観的事情の変更により、堅固建物の所有を目的とするのを相当とするにいたつたものというべく、本件申立は、これを認容すべきである。
2、附随処分
鑑定委員会は、契約の目的の変更に伴う借地権価格の差額に更新料相当額を加えたものを財産上の給付としている。借地が非堅固建物所有目的という契約の枠で縛られているがため土地の高度利用が妨げられている場合、右の枠を外することは借地権価格に影響を及ぼすことは当然であるので、財産上の給付として、契約の目的の変更に伴う借地権価格の差を考慮するのは相当であるが、借地人としては更新料を支払う義務はないのであるから、更新料を考慮に入れることは相当でない。鑑定委員会は、本件土地が、幅員四米の私道に接していること、間口四米奥行三八米の不敷形袋地かつ背面一部崖地である等特殊事情を考慮した上本件土地全部の更地価格を二七三万二、〇〇〇円と評価し、その一〇%が契約の目的の変更に伴う借地権価格の差であるとするので、右意見に従い、財産上の給付を金二七四万円(万円未満四捨五入)とし、借地期間を三〇年延長し、当事者双方の希望により賃料を3.3平方米当り一ケ月一五〇円に改定するのを相当とし、主文のとおり決定する。
(小山俊彦)
目録
土地賃貸借契約
一、当事者
賃貸人 相手方ら
賃借人 申立人
二、借地
東京都千代田区麹町四丁目八番一
宅地 952.92平方米(288坪2合6勺)の内297.52平方米
三、目的
非堅固建物所有
四、期間
昭和六二年九月三〇日まで
五、賃料
一ケ月八六〇〇円